20代で無名企業のしがない営業から外資マーケティング職に転職。30代で広告代理店、外資系を転々とした末、40代前半で日本の金融機関にマーケティング部長としてヘッドハンティング。転職4回。
twitter: @jobHopper_eight
スゴイ漠然とした質問ですよね。どう答えたら正解なのか迷うのも、無理もありません。
そうした時に頼りになるのが転職サイトや転職マニュアル本のアドバイス!
のはずなんですが、並みいる大手転職サイト、ベストセラーの転職本に掲載されている山のような自己紹介回答例は、現場を知るものからすると、一様に「変」です。
実際の転職面接をそれほど経験していない"自称"転職コンサルタント・キャリアアドバイザーとかいう人たちが"想像"で書いた代物なんでしょうが、現場感覚とズレています。
そこで、今まで転職面接を数十社経験した立場から、そして自分が面接官をしてきた立場から、
- 「何を聞かれているのか?」
- 「どう答えたらいいのか?」
お話ししてみたいと思います。
Contents
みんな「自己紹介」を勘違いしてる?
次の自己紹介例は、ちょっと古いですが、昔のベストセラー、中谷彰宏氏の「面接の達人 転職問題集」に載っていた回答例です。
一度きりの人生なので何でもやってみよう、をモットーにどんな仕事にも積極的に挑戦していく性格です。社会保険労務士の資格取得のため学校へ通ったり、タイ人との交流会に週1回参加、雑誌の取材協力、会社の野球部のマネージャー、最近では日本海へ重油回収のボランティア参加と様々な経験から忍耐力を得ました。
もう一つ。
私は通信業界で5年間、営業としてトップクラスの成績を残してきました。営業力のみならず、通信市場にはハード、ソフトともに精通しており、学生時代に身に着けた財務分析力も私の強みの一つです。趣味はウィンドサーフィンで、今年念願の大会入賞を実現させてきました。性格は落ち着いておりますが、いつも何かに熱中しております。
中谷氏は、これら2つの回答に対し、
一度にたくさんの事を言おうとすると、何を言っているのか分からなくなる。一つに絞って体験を話せ。
とアドバイスされています。
皆さんはどう思われたでしょうか?
もし私が面接官なら、二人の回答とも、内心、
つまり、「色々な事を言いすぎ」という中谷氏の指摘以上に(このご指摘は正しいですが)、根本的に「聞きたいことにまっすぐ答えられていない」と判断します。
そもそも自分の置かれた状況を考えれば容易に分かるはずなんですけどね・・。
自己紹介は仕事の話をすべし
中途採用の面接は、あくまで、あなたが求人の職務を遂行できる能力(経験、スキル、実績)があるか見極めることが主眼です。
つまり、面接官が真っ先に関心があるのは「仕事の話」です。性格の話や、趣味の話、プライベートの過ごし方ではありません。
もちろんそれらも、あなたの人間性を見極める上では知っておきたい情報ですが、仕事の話よりも優先順位はだいぶ下。
だから、まず、あなたが自己紹介で話すべきなのは「仕事の話」です。
自己紹介=自己PRではない
先ほどの2番目の人は、
私は通信業界で5年間、営業としてトップクラスの成績を残してきました。
と「自己PR」をしていました。
これは間違いではありませんが、この質問がどのような状況で投げかけられるか想像すれば、いかにズレた回答か分かるはずです。
この質問は普通、面接の「一番最初」、面接官から、
のようなのあいさつの後、
のように聞かれます。
面接官にしてみたら、話を始めるきっかけに投げただけ。
この後、あなたの回答にしたがって色々な質問が展開される「前振り」にすぎません。
それなのに、いきなり肩をいからせて、
といった話をされたら、
ってな話。
どっかの就職本や転職サイトの影響なのか、何でもかんでも「自己アピール」で返す人がいますが、面接官にしてみたら、
と逆効果です。
私の周りの転職マニアの連中は採用担当として面接することも多いんですが、「質問にまっすぐ答えることさえできない人が非常に多い」と嘆いてました。
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簡潔にまとめて話す
では、どう答えたらいいのでしょうか?状況を考え、「普通に」回答しましょう。
面接の「一番最初」の「前振り」なんですから、細かい話は不要、「ざっくり」と仕事の説明ができればOKです。
どのくらい「ざっくり」でいいかというと、
- 今の会社の事業内容(何屋さん?)
- 業務内容(何の仕事?)
- (役職があれば)現在の役職(部署内での役回り)
を話したらいいでしょう。例えば、
私は富山製薬という医家向けの製薬会社で営業をしています。栃木県・群馬県の開業医・病院を担当していまして、主に風邪薬や痛み止めの薬を医師に売り込んでいます。さらにチームリーダーとして5人のメンバーを指導しています。
これでOK。
時間にして、30秒もかかりません。
自己紹介はこの質問1つで終わりではありませんからご安心を。あなたの回答を受けて、
といった質問が矢継ぎ早に飛んできますので、いくらでもあなたを「紹介する」チャンスはあります(笑)。
「自分を知って欲しい!」と色々と話したくなる気持ちは分かりますが、話が長いと、逆に、
と疑問符が付きかねませんので注意してください。
ちなみに、私のように転職回数が多い人が「経歴をざっと説明してくれ」と言われた場合でも、せいぜい2分もかけられないと思ってください。
【応用編】都合良く情報を操作する
ここまでは、いかに面接官の欲しい情報を与えるか、いかに質問にまっすぐ答えるか、という受動的な話でした。
ここからは能動的に「いかに自分の都合がいいよう、面接の流れをコントロールするか」という観点でのお話しです。
面接を通じてやらなければいけない事は、言うまでもなく、自分が求人職務に適任と思ってもらうためのアピールです。
ですから、ヘタしたら30分くらいしかない面接時間を、アピールにつながらない話、突っ込まれたらマイナスになりそうな話には、1秒だって使わせてはダメです。
面接官の質問はコントロールできる
面接は基本、こちらの回答に「なぜですか?」、「それ、どういうことですか?」と突っ込む形で進められます。
私の経験上、面接時間の7~8割はこうした「突っ込み質問」で占められます。
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【転職マニア解説】"突っ込み質問"はこう準備する
Contents1 回答への突っ込み質問の方が多い2 関連質問はすべてあなたの答えに基づいている3 友人に協力してもらう 回答への突っ込み質問の方が多い 関連 ...
つまり、面接官の質問は、こちらがどう答えるかで、ほぼ決まるんです。
例えば、先ほど「自己紹介は仕事の話に絞りましょう」と言いましたが、次に飛んでくる質問は確実に仕事関連に絞られます。
相当頭のおかしな面接官でも直後に趣味や性格を聞いてくることはないでしょう。
これを逆手にとって、戦略的に回答することで、自分が聞いて欲しい質問、聞いて欲しくない質問をコントロールするという訳です。
自己PRにつながるよう情報操作
自己PRをするのではありませんよ。質問に「まっすぐに」答えつつ(これ絶対!)、自己PRの前振りになるように回答するんです。
さきほどの「富山製薬の営業、山田さん」を例に説明しましょう。
求人の必須条件を押さえる
彼は大手製薬会社の営業マネージャー職(管理職)に応募していました。
マネージャーというのは、一般に、自分の仕事ができるだけでなく、部下やチームメンバーをうまく使う(管理する)事も求められています。
そこで考えたのか先ほどの自己紹介でした。
私は富山製薬という医家向けの製薬会社で営業をしています。栃木県・群馬県の開業医・病院を担当していまして、主に風邪薬や痛み止めの薬を医師に売り込んでいます。さらにチームリーダーとして5人のメンバーを指導しています。
先ほどの2点、①自分の仕事、②部下の指導という観点に絞って自分の仕事を語ることで、面接官の望む回答をしつつ、マネージャーとしての適性もそれとなくアピールできています。
自分の強みをネタ振り
必須条件を押さえただけでは、他の候補者も似たような観点からアピールしてくるでしょうから、差をつけられませんよね。
そこで、質問からズレない範囲で、先ほどの文章に「一言」足すことにしました。
私は富山製薬という医家向けの製薬会社で営業をしています。栃木県・群馬県の開業医・病院2,000件以上を担当していまして、主に風邪薬や痛み止めの薬を医師に売り込んでいます。さらにチームリーダーとして5人のメンバーを指導しています。
何が違うか分かりますか?
実は、「2,000件以上」という数字を足しています。
これにより、彼が自己PRのポイントとして決めていた「頭を使って効率的に仕事をする」点に面接官の関心を引き込もうとしています。
「2000件以上」の顧客数は普通に考えて異常値ですから、面接官の頭の中に「そんなに多くの顧客をどうやって管理するんだろう?」という疑問が浮かぶはず。
もう一回くらい、どこかで「2,000件以上」を念押ししたら、そうした質問が飛んでくるでしょう。
そうしたら「いかに膨大な数の顧客から重要顧客を見つけ出し、効率的に売り上げを積み重ねていくか」を説明し、その他大勢の「気合型営業マン」と差別化してやろうというハラです。
相手の質問にきれいに返せて、しかもそれが自己PRにもなっている回答です。
間違いなく「リターンエース」、高評価です。
なお、
と思っている人もいるかもしれませんが、多くの場合、それは自己PRが固まっていないからです。
そんな人はまずは、その求人で内定を勝ち取るための戦略作り、つまり、自己PRを定めることから始めてみてはいかがでしょう?
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志望動機・転職理由を最初に打ち取る
「自己紹介」は、あまり突っ込まれたくない質問を後々させないようにするのにも都合がいいです。
例えば、私は今の会社に入った志望動機や転職理由もカンタンに言い添えることにしています。
その方が「人となり」を分かってもらいやすいのもありますが、それ以上に、最初にカンタンに触れておけば、それ以降質問されることがないからです。
特に、志望動機や転職理由で「どうしてもこの会社でなければいけない理由がない」場合には好都合。簡単な説明で打ち取れちゃうので、面接が楽になります。
一応、どのように自己紹介に含めるのか、転職歴アリ・ナシで回答例を挙げておきます。
<例1:転職歴なし>
大学を卒業後、面接で出会った人たちの人柄に惹かれて今の会社に就職しました。
現在の会社は半導体などを扱う専門商社でして、入社後は一貫して経理畑の仕事をしています。
主な業務は、5人からなるチームのリーダーとして、月次PLの作成とそれに基づく分析業務、経営層へのレポートを担当しています。
<例2:転職歴があり>
専門的なスキルを身につけたいと思い、大学卒業後、鈴木電子工業に入社し、SEをしていました。SEとして5年間・・・・。
その後、過労で身体を壊してしまったことがきっかけで、体力に任せた仕事ではなく企画職をやりたいと思い、縁あって現在の佐藤電機に入社いたしました。
入社後は商品企画部に配属され、セキュリティ関連のソフトウェアの開発に従事しています。・・
自己紹介の答え方まとめ
今まで言った事をまとめると、理想的な回答は、
- なぜ今の会社を選んだのか?(今の会社の志望動機・転職理由)
- どのような会社で働いているのか(事業内容等)?
- どのような仕事をしているのか?(業務内容)
- (役職があれば)どのような立場なのか?
- 自己PRにつなげやすいよう、かいつまんで話す
となります。
実はめったに「自己紹介して」とは言われない
ここまで説明しておいて言うのは心苦しいのですが、実際は、面接で「自己紹介してください」と言われることは非常に「まれ」です。
あなたが、「どこの誰か」は事前にもらった履歴書や職務経歴書に詳しく書いてあるからです。
代わりに、よくあるのは、ある程度事前に渡した書類に基づいた質問です。
とか、
といったもう少し具体的な質問に代わります。
ですので、こうした「変化球」にも対応できるよう、回答例をいくつか用意しておくと、慌てずに済みます。
もちろん回答の考え方は一緒です。
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